キーストン社の特徴

cinedict2007-01-17


 キーストン社はマック・セネット(写真)の会社だった。アレグザンダー・ウォーカーは「スターダム」の中で次のように書いている。

「この会社(キーストン)は、一人の男が自分の望みどおりのコメディアンを使い、自分の好きな映画を作るために、自分のイメージに合わせて創設したものだからである。キーストン社はこれらすべての点において、他社に抜きん出た相違と能率を示した」(P95)

 ちなみに、1912年以前の映画の3分の1近くが喜劇映画という。ロバート・スクラーは「アメリカ映画の文化史」の中で次のように述べている。

「労働者階級の観客が、映画をまったく自分たちの好みに合うものだと考えたのも、驚くにはあたらない―ほかにもいろいろ理由があるが、とりわけ映画は自分たちの生活に不幸をもたらす人間にたいする彼らの敵意と恨みの感情をわかりやすく表現してくれたからである。もちろん、秩序は回復されたが、その前に権威と尊厳はかならず仮面をはぎとられた」(P216)

 マック・セネットのコメディは「貧乏人を嘲笑し、権力者を嘲笑し、ロマンスを嘲笑し、婦人服の流行を嘲笑するもの」(P217、スクラー)で、「粗野で鈍感で品がなく、露骨であからさまなもの」(P220、スクラー)で、「セネット以前には、それほど執拗に、社会の混乱と無秩序および暴力を徹底して描き出した者はいなかった」(P222、スクラー)という。しかし、一方でセネットの映画は道徳家を刺激しなかった。それは、道徳家は社会への「まじめな」抗議にのみ反応したからだった。



(映画本紹介)

スターダム―ハリウッド現象の光と影

スターダム―ハリウッド現象の光と影

銀幕を飾った映画女優を分析した一冊。単なる紹介ではなく、時代背景や映画の変遷と絡めて書かれた底の深さは、一読に値する。


アメリカ映画の文化史―映画がつくったアメリカ〈上〉 (講談社学術文庫)

アメリカ映画の文化史―映画がつくったアメリカ〈上〉 (講談社学術文庫)

映画作品のみならず、映画とアメリカ社会全般を幅広く眺めた1冊。検閲という映画に大きく影響を与える事象についても触れられている。