エジソン社の作品 1912年(6)

「A CHRISTMAS ACCIDENT」

 隣同士に住む、貧しくも多くの子供たちに囲まれて幸せに暮らす家族と、金持ちだが自己中心的な老いた夫と心の優しい老いた妻の夫婦。自己中心的な金持ちの老いた夫に、隣に住む家族はいつも寛大に接している。クリスマス・イヴの夜、貧しい家族は七面鳥を買うことができない。そこに、隣に住む自己中心的な老いた夫が間違えて入ってくる。その風貌はまるで七面鳥を持ってきてくれたサンタ・クロースのようだった。彼を歓迎する貧しい家族の姿に、自己中心的な男はついに心を開くのだった。

 15分程度の短い時間で、心の温まるストーリーがきっちりと収められている。当時、D・W・グリフィスは物語を語る技法を磨いていたが、この作品にはグリフィスが磨いたような技法は使われておらず、固定されたショットが長めに撮影され、シーンごとに編集するという旧来からの手法が使われている。それでも、この作品が魅力的なのは、ひとえにストーリーによる。

 原題である「クリスマスの出来事」と聞くと、どこかファンタジーの雰囲気を感じるが、この映画は違う。きわめて現実的な出来事の積み上げが奇跡を呼ぶのだ。思えば、「三十四丁目の奇蹟」(1947)も現実的な出来事の積み上げによる奇跡だった。アメリカのクリスマス映画には現実的な奇跡を扱ったものが多い。D・W・グリフィスによる「A TRAP FOR SANTA(1909)」もそうだった。



(ビデオ紹介)

Christmas Past [VHS] [Import]

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サイレント期に製作された、クリスマスをテーマにした作品集。今も昔も特別な日であるクリスマスは、もちろん映画草創期から取り上げられやすい題材だった。