エジソン社の作品 1912年(8)

「THE LAND BEYOND THE SUNSET」

 エジソン社が赤十字などと提携して製作した、貧しい子供たちの存在と子供たちを助ける団体の存在を知らしめるために製作された作品である。と書くと、大げさに描かれた貧困の状況や、むやみに笑顔を振りまく団体の人々というイメージが浮かぶかもしれないが、この作品はかなり趣が異なっている。

 アル中の祖母に虐待されている少年ジョー。ジョーはある団体が主催する無料のピクニックに参加して、そこでおとぎ話を聞く。日が沈む地平線にある場所で、幸せに暮らす少年の物語だ。海辺を歩くジョーは小船を見つけると、夕陽に向かって小船を進める。夕陽に照らされるジョー、彼がどうなったのかは誰にも分からない。

 この映画には解決策は示されていない。きちんと、団体の活動が紹介されていながらも、映画全体は悲しい少年ジョーの物語となっている。結局、ジョーはどうなってしまうのか?そのことにも映画は結論を出さない。そんなことは正直問題ではないのだ。問題は、おとぎ話を聞いて、おとぎ話に出てきた夢の場所を求めて、小船で夕陽に向かってしまうまで、ジョーが追い詰められているということなのだ。その悲しさがこの映画の全編を染めている。

 夕陽に向かって進む小船が海にポツンと浮かぶ様子をロング・ショットで撮影したラスト・シーンはこの作品を見事に完結させている。そこにはただ、美しさと悲しさが漂っている。



(DVD紹介)

「TREASURES FROM AMERICAN FILM ARCHIVES」

アメリカのフィルム・アーカイブ所蔵の作品を収録した4枚組のDVD。

アメリカのamazonから輸入して買うことができるが、もちろん英語。それでも買いたいと思う人は、下記サイトが参考になります。

http://dvd.or.tv/


注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。