D・W・グリフィスの作品 1912年(1)

「FOR HIS SON(息子のために)」

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。

 息子を溺愛する医者が、小遣いをせびってくる息子のために、コカイン入りの飲み物「Dopokoke」を開発して売り出したところ大人気となる。だが、皮肉にも当の息子が「Dopokoke」の中毒となってしまう。

 麻薬中毒を扱った初期の作品として貴重だが、息子を溺愛しすぎた父親の身に降りかかる悲劇としても成立した作品。だが、ストーリーの重みに対して、15分という上映時間はあまりにも短すぎる感がある。それでも、物語が持つ力強さによって15分の間、いささかの緩みもない。

 グリフィスは、コカインの瓶などの重要な小道具をクロース・アップで捉えるといった技法を駆使している。物語を深めようという努力が垣間見える。

 ちなみに、この映画に登場する「Dopokoke」のモデルは「コカ・コーラ」であるという。1903年にアメリカでコカインの販売が禁止されるまで、コカインは普通に薬局で買えるものだった。発売当初のコカ・コーラ(当初は「dope」と呼ばれていた)にはコカインが含まれていたのだった。19世紀後半、アメリカでは客の注文に応じて薬と飲料水を調合して飲ませる薬局が流行っており、コカ・コーラが特別な飲み物だったわけではない。

 明確に特定の商品をモデルにしているという点も、この作品の特徴として挙げられるだろう。



(DVD紹介)

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

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 バイオグラフ社所属時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。多くが1巻物(約15分)の作品が、全部で22本見ることができる。