D・W・グリフィスの作品 1912年(3)

「THE GIRL AND HER TRUST(彼女と彼女の信頼)」

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。

 1911年にグリフィスが監督した「THE LONEDALE OPERATOR」のリメイクとも言える作品。強盗に襲われる少女を、少女に恋する男性が助けるという内容は同じだが、この作品では舞台が駅のみにとどまらず、汽車とトロッコチェイスにまで至る。

 グリフィスの作品を説明するときによく使われる「ラスト・ミニッツ・レスキュー」(最後の瞬間での救出劇)の代表例としてよく引き合いに出される作品である。危機に陥った人々と、救出に向かう人々をクロス・カッティングでつなぐことでサスペンスを高めるという手法が用いられている。

 この作品を特徴づけているのは、その「ラスト・ミニッツ・レスキュー」だけではなく、鉄道を使ったチェイスシーンが上げられる。移動するトロッコを至近距離から撮影したショットは、これまでの作品では見られないもので、映画にこれまで以上の迫力を持ち込んでいる。

 というグリフィスのテクニックの発展を考える上では、非常に適した作品であると思うが、かといって今見て面白いかというとそうでもない。これらの技法は、この後作られる様々な映画たちの中により磨かれて登場するからだろう。

 ちなみに、1913年にはグリフィスの弟子だったマック・セネットが主宰するコメディ製作会社のキーストン社が、この作品のようなタイプのグリフィス作品のパロディである「Bangville Police」が製作されている。ここでは、少女は泥棒ではない人物を間違って泥棒と思い込み警察に通報し、警察も警察でグリフィス作品とは程遠いドタバタぶりでやって来る。



(DVD紹介)

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

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 バイオグラフ社所属時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。多くが1巻物(約15分)の作品が、全部で22本見ることができる。