D・W・グリフィスの作品 1912年(5)

「ONE IS BUSINESS, THE OTHER CRIME(かたやビジネス、かたや犯罪)」

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。

 登場人物は2組の夫婦。片方は貧しく、片方は裕福。裕福な方の夫は、鉄道会社から選挙で買収されようとしている。貧しい夫は、仕事が見つからずに裕福な夫婦の家に強盗に入る。強盗に入った貧しい夫は、裕福な夫の妻に見つかるが、たまたま夫が買収されようとしていたことを知り、貧しい夫を逃がしてやる。

 グリフィスは「CORNER IN WHEAT(小麦の買占め)」(1909)を始めとして、社会的弱者を描いた作品を多々製作しており、この作品もその系列の1本である。グリフィスの話法は滑らかで、テンポがよい。もうそういった点はあえて指摘する必要がないほど当たり前になっている(グリフィスの作品において当たり前なのであって、同時代の他の作品はそうではない点は注意)。

 物語は偶然によって裕福な夫が改心するというドラマである。どちらかというと、裕福な夫婦の方に比重が置かれている。それは、ラストで裕福な夫の計らいによって、貧しい夫が仕事を得ることができるという展開となる点からもわかる。あくまでも、改心した裕福な夫の力によって、貧しい夫婦にも未来が開けるのだ。この点で、社会問題を扱った作品としては甘い作品となっているものの、ドラマとして考えるとそこは関係がない点だろう。



(DVD紹介)

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

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 バイオグラフ社所属時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。多くが1巻物(約15分)の作品が、全部で22本見ることができる。