D・W・グリフィスの作品 1912年(12)

「THE BURGLAR'S DILEMMA(強盗のジレンマ)」

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。

 人気者の兄に劣等感を抱いている弟。あるとき、弟は兄を突き飛ばしてしまい、頭から転んだ兄はそのまま動かなくなってしまう。そこにたまたま強盗がやってくる。これ幸いにと、弟は兄を突き飛ばして殺したのは強盗だと警察に通報する。警察に捕まった強盗は、弟の前で警官の厳しい尋問にあう。すると、実は生きていた兄が眼を覚まし、自分で転んで気絶したと証言する。

 この作品の見所は、尋問される強盗とそれを近くで見る弟の表情のカット・バックにある。若くて気が弱そうな強盗はひたすら怯えている。それに対して弟は、悪いことをしている後悔の念、もう少しで罪を着せることができそうな期待感、先が読めない不安感といったあらゆる表情をみせる。時間を重ねるにつれて緊張感が高まるこのシーンは、死んだはずの兄が生きていることが分かって一瞬にして緊張感がプツっと切れる。この緩急がこの作品の最大の見所だ。

 弟が兄に劣等感を抱いているという点を、兄の誕生日を祝いに多くの友達がやってくるというシーンでさらりと、だがしっかりと描いて、緊張感を高めることに多くの時間を使っている。グリフィスの演出は、物語を語るだけにとどまらず、ヒッチコック的なサスペンスの演出の源ともなっている。

 ちなみに、兄を演じているのはライオネル・バリモア。



(DVD紹介)

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

 バイオグラフ社所属時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。多くが1巻物(約15分)の作品が、全部で22本見ることができる。