ユニヴァーサルの第一作

 1912年にIMP社とパワーズ社などが合併して設立された、カール・レムリのユニヴァーサル社の第一作が1913年に公開されている。ニューヨークにおける社会調査を元にした「暗黒街の大掃蕩(TRAFFIC IN SOULS)」(1913)がそれである。この作品は、6巻物の大作だった。レムリは、1本に5千ドル以上投資することを拒否していたが、監督のジョージ・ローン・タッカーが独自に資金調達し、約6千ドルで製作され、ヒットした。内容はデンマーク映画「白人女奴隷」(1910)にヒントを得ており、「売春婦」を扱った最初期のアメリカ映画といわれている。同時に、セックスの商品価値を見せ付けた映画ともいえる。

 ちなみに、「白人奴隷売買の内幕」(1913)という「暗黒街の大掃討」の二番煎じの作品も作られている。

 ユニヴァーサルはこの後、刑務所、麻薬、アルコール中毒、死刑、浮浪児といった社会問題を扱っていき、独自の特色を打ち出していく。

 6巻ものの「暗黒街の大掃蕩」や、1914年に公開されるラスキー社の長篇「スコウマン」のヒットは、映画の長篇化の流れを決定的なものとしていく。

 ユニヴァーサルが1913年に配給した作品には、他にも「SUSPENSE」といった作品がある。



(映画本紹介)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

映画誕生前から1929年前までを12巻にわたって著述された大著。濃密さは他の追随を許さない。