マック・セネットのキーストン社

cinedict2007-04-15


 マック・セネット(写真)が率いる喜劇映画製作会社のキーストン社では、後に大人気喜劇役者となるロスコー・アーバックルがヴォードヴィルの世界から、キーストン社に入社している。アーバックルは「ファッティ」のあだ名で、メイベル・ノーマンドとの共演作などで人気を得ていく。アーバックルは1913年には「FATTY JOINS THE FORCE」といった作品に出演している。

 また、追っかけに巻き込まれる警官の集団「キーストン・コップ」が登場するようになったのも1913年である。

 他にも、ヘンリー・レーアマン(視覚的なギャグを生み出し、キーストン喜劇の成功に貢献)や、フォード・スターリング(ユダヤ人喜劇を生み出す。粗野な顔つきで、しょっちゅうしかめ面をし、通常は山高帽を被り、山羊ひげをたくわえることでアメリカ人を演じた)らも活躍した。

 セネットはキーストン映画に出演するコメディアンたちに誇張された特徴を求めた。ジョルジュ・サドゥールは「世界映画全史」の中で、次のように書いている。

「彼(セネット)は諷刺に対して鋭い感覚を持っている。彼の主人公たちは正確には道化師ではない。つまり、彼らは日常生活の中から取り出されている。しかし、いくつかの意識的に誇張された特徴−道化調の帽子、偽りのあご髯や口髭、痩せすぎか太りすぎた人−が、主人公たちを見事に特色づけているので、一度見ただけでも決して忘れられないのである」

 チャールズ・チャップリンが、キーストン社へ入社するのも1913年の大きな出来事だ。チャップリンは、イギリスのヴォードヴィル一座のフレッド・カーノ一座でパントマイムのテクニックを磨いていた。1913年のニューヨーク公演で、キーストン社用の俳優を探していたマダム・ケッセルに認められ、週給150ドルでキーストン入りする。チャップリンは1914年から出演映画が公開され、瞬く間に世界中の人気を得ていくことになる。

 1913年に公開されたキーストン社の作品には、メイベル・ノーマンドが出演している「BANGVILLE POLICE」「A MUDDY ROMANCE」「BARNEY OLDFIELD'S RACE FOR A LIFE」「MABEL'S DRAMATIC CAREER」などがある。



(映画本紹介)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

映画誕生前から1929年前までを12巻にわたって著述された大著。濃密さは他の追随を許さない。