D・W・グリフィスの作品 1913年(1)

「THE MASSACRE(大虐殺)」

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。ジェネラル・フィルム社配給

 ネイティブ・アメリカンの村を襲う白人の軍隊。ネイティブ・アメリカンたちは復讐を決意し、西部へ向かう白人たちのワゴンを襲う。

 西部劇の形式で、白人側のドラマも織り込まれているが、映画の主眼はタイトルにもある「殺戮」を描くことになる。グリフィスは白人の側に寄り過ぎることなく、白人がネイティブ・アメリカンの村を襲う「殺戮」と、その復讐にネイティブ・アメリカンが白人たちを襲う「殺戮」の2つを描くことにより、どちらが悪いという問題ではなく、殺戮自体の非人道性を描こうとしているかのようだ。

 映画の主眼である「殺戮」のシーンの演出が見事だ。両方とも、高所から撮影した鳥瞰的なショットと、殺戮の現場近くを撮影したショットを組み合わせて、シーンを盛り上げることに成功している。この撮影方法は、「国民の創生」(1914)の戦闘シーンでも活かされることになる。

 ネイティブ・アメリカンが白人を襲うシーンでは、白人たちが固まって真ん中の女性と赤ん坊を守りながら、周りから押し寄せてくるネイティブ・アメリカンたちと銃撃戦を繰り広げる。このときの固まった白人たちの姿は、一種の造形美を感じさせるものがあり、画面の造形におけるグリフィスの演出力を見ることができる。

 ラストでは、ネイティブ・アメリカンに殺された白人男性の死体の山の中から、女性と赤ん坊が救出される。死体の山は、「殺戮」のすさまじさや悲しさを訴えるのに十分な効果を持っている上に、女性と赤ん坊の救出という感動的なシーンを盛り上げる役割も果たしている。

 この作品は、グリフィスのスペクタクル・シーンの演出力の素晴らしさを知ることができる上に、グリフィスの人道的な側面を見ることもできる。見ごたえのある作品である。



(DVD紹介)

「Biograph Shorts 」

 バイオグラフ社監督時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。ほぼ15分程度の短編が、全23作品収められている。デビュー作「ドリーの冒険」も収録。

 アメリカのamazonから輸入して買うことができるが、もちろん英語。それでも買いたいと思う人は、下記サイトが参考になります。

http://dvd.or.tv/


注意!・・・amazonでは「リージョン1」となっていますが、私が持っている日本国内用の「リージョン2」のプレーヤーでも再生できました。リージョンは「オール」と思われますが、実際に購入して見られなくても責任は負いません。