D・W・グリフィスの作品 1913年(2)

「THE HOUSE OF DARKNESS」

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。ジェネラル・フィルム配給。

 とある精神病院から1人の初老の患者が逃げ出す。興奮した患者はピストルを手に入れ、とある家に押し入り、そこに住む女性を脅す。しかし、偶然からピアノの音に患者が反応することに気付いた女性がピアノを演奏すると、美しい調べに心を洗われた患者は大人しくなるのだった。

 精神病院を描いた最初期の作品と言われている。また、音楽療法の効果について触れた最初期の作品でもある。音楽の愛好家でもあったグリフィスにとって、音楽療法は疑う余地のない最良の治療法だと考えたのか、音楽を聴いたとたんに大人しくなり、しかも音楽治療を続けることで患者たちが次々に完治していくという展開のストーリーの作品である。このあまりにも音楽療法を過大評価していると思われる描き方は、この作品の印象を音楽療法の過剰なプロパガンダ映画というものにしてしまっているように思える。

 グリフィスの演出は、冴えている。女性が子猫と遊ぶのどかなショットと、病院から抜け出した患者が静かに入り込んでくるショットをゆっくりとした間隔でつなげて、サスペンスを高めている。また、サイレント映画のため、音を観客に意識させるために、女性が偶然ピアノの鍵盤を触るシーンでは、鍵盤に触れる手がクロース・アップで捉えられている。とはいえ、この作品を完全な無音状態で見たら、効果は落ちるだろうと思われるが。

 この作品は、グリフィスの演出の確かさはもちろんだが、「国民の創生」(1915)の批判へもつながった題材への信仰の大きさを感じ取ることが出来る。グリフィスにとって、音楽療法は絶対的なものなのだろうという感じがする。それは、「国民の創生」で描いた黒人観がグリフィスにとって絶対であったように。グリフィスの頑迷さを感じる作品でもある。



(DVD紹介)

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

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 バイオグラフ社所属時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。多くが1巻物(約15分)の作品が、全部で22本見ることができる。