D・W・グリフィスの作品 1913年(3)

「DEATH'S MARATHON

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。ジェネラル・フィルム配給。

 ビジネス・パートナー同士である2人の男性から求婚された女性は、その片方と結婚する。子供も生まれて幸せと思われた結婚生活だが、夫がギャンブルにはまり借金を作ってしまう。そのため、自殺を図ろうとする夫は、妻に最後の電話をかけてくる。それを知ったパートナーは救出に急行する。

 三角関係、最後の救出劇といったグリフィスの短編に登場する様々な要素が散りばめられた作品であるが、最も大きく違う点がある。それは、救出劇が失敗に終わるという点だ。

 借金を抱えた夫は、助けを待たずに拳銃自殺を遂げてしまう。映画は、助けに行くパートナーと自殺を図ろうとする夫のカット・バック(助ける者と助けられる者のカット・バック)ではなく、自殺を図ろうとする夫と電話で話している妻の様子のカット・バックとなっている。つまり、ドラマの主眼はこの世から去っていく夫と、去られる妻にあるのだ。このことからも、夫の死は約束付けられていたのだ。

 この世から去っていく夫の狂気じみた表情は、妻の困惑と動揺のためもあり、映画にサスペンスを与えることに成功している。この作品には、単純な最後の救出劇のサスペンスにはない、心理的なサスペンスがある。グリフィスといえば単純な最後の救出劇(カット・バック)ばかりが取り上げられるが、決してそれだけではないことをこの作品が教えてくれる。



(DVD紹介)

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

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 バイオグラフ社所属時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。多くが1巻物(約15分)の作品が、全部で22本見ることができる。