キーストン社の作品 1913年(4)

「MABEL'S DRAMATIC CAREER(メーベルの劇的な半生)」

 アメリカ、キーストン社製作。ミューチュアル社配給。アメリカのスラップスティック映画の始祖であるマック・セネット製作の作品。看板女優だったメイベル・ノーマンドが主演。

 メイドのメイベルに恋をしている田舎もののマックだが、街からやってきた女性に一目ぼれして、メイベルを追い出してしまう。時がたち、一目ぼれした女性にも振られてしまったマックは、メイベルが出演している映画を見つけて映画館に入る。マックは悪漢に捕まったメイベルの姿を見て、現実と区別がつかなくなってしまい、大騒ぎをする。

 コメディとして見ると取り立てておもしろくはない。マックを演じているのは、マック・セネット自身だが特におもしろい芸があるわけではないし、ストーリーも工夫されているがおもしろいというわけではない。

 注目すべきは、映画の中で映画を扱っているという自己言及性だろう。メイベルが出演している映画は、「キーストン映画」という設定で、上映されている映画の内容も、他のキーストン映画と似た内容となっている。映画の終盤では、映画内の映画の字幕なのか、この作品そのものの字幕なのかがわからなくなってしまう。セネットはこの後、「醜女の深情」(1914)でも映画内映画に重要な役割を持たせることになる。

 映画への自己言及を行った最初期の作品として注目すべき映画だ。だが、あまりおもしろくはない。



(ビデオ紹介)

Slapstick Encyclopedia [VHS] [Import]

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 サイレント期のスラップスティック・コメディを集めた5本組みのビデオ。チャップリンキートン、ロイドといった有名どころ以外のスラップスティック・コメディの数々を見ることができる。

※日本製のビデオデッキでも再生できます。