セシル・B・デミル監督「THE SQUAW MAN(スコウ・マン)」

 セシル・B・デミル製作・脚本・監督、オスカー・アプフェル監督・脚本、ダスティン・ファーナム出演
 ジェシー・L・ラスキー・フィーチャー・プレイ・カンパニー製作、フェイマス・プレイヤーズ=ラスキー配給

 横領の濡れ衣を着せられ、アメリカへと追われたイギリス人のジムは、西部に腰を落ち着ける。そこで、ネイティブ・アメリカンの女性と結婚して、男の子ももうける。そんなジムの元に、濡れ衣が晴れたという便りが届く。

 セシル・B・デミルのデビュー作としても知られている。また、映画製作者として活躍するジェシー・L・ラスキーの映画製作第一作でもある。さらには、製作面では名前が出てこないが、サミュエル・ゴールドウィンも営業の面で関わっており、この作品の成功がなければ三人の以後の活躍がなかったかもしれないことを考えると、非常に重要な作品である。また、この作品は、ハリウッドで撮影された初の長編映画と言われている。

 デミルの演出は、固定カメラに終始しており、かなり平凡だ。元々は舞台劇ということもあるのか、特に序盤は字幕に頼らなければストーリーが追えない。キャラクターも主要人物以外は、あまり区別がつけられていない。

 映画としては、それほど面白いとは思えなかったこの作品だが、題材の選び方が秀逸なように思える。イギリスから濡れ衣を着せられてやってきた男がアメリカ人となるという話は、アメリカ人にとって心地よいものだろうと思われる。映画的とはいえないものの、舞台で成功した作品という保証もついている。

 デミルは、アメリカ人に受け入れられやすい題材を常に選び、常にトップ監督として以後も活躍を見せていく。また、ラスキーは、「フェイマス・プレイヤーズ」という社名からも分かるように、有名な舞台劇を映画化することでヒットを飛ばしていく。そんな彼らの目論見が間違っていなかったからこそ、この作品はヒットしたのだろう。

 この作品は、長篇であること、アメリカ人ならではの題材を選んだこと、舞台劇を映画化したことなど、この後のヒットの法則の沿った映画だと言える。映画自体はおもしろいとは思えなかったが、この映画に関わった人々が成功したのはなぜかの理由の1つを、この映画は教えてくれるようだ。