THANHOUSER社の作品 1914年

「A DOG’S LOVE」

 THANHOUSER製作 ミューチュアル・フィルム社配給

 少女ヘレンの友達は隣に住む犬のシェプだけ。あり日、ヘレンは交通事故に遭って死んでしまう。シェプは、毎日ヘレンのお墓に花を届けるのだった。

 約11分の短い物語である。物語というよりも詩と言った方が適切かもしれない。物語というには、ヘレンはあまりにも早く、あまりにもあっけなく死んでしまう。

 ヘレンの死の後のシェプの行動が胸を打つ。ヘレンの両親と一緒にヘレンの墓に行き、毎日ヘレンのために花を墓に供える。シェプはよく調教されている。もちろん、シェプ役のコリー犬は、ストーリーを理解しているわけはない。それでも、ヘレンとシェプが仲良くしていた映像と、シェプが食べ物を拒否する映像が結びつくとき、シェプが悲しみのあまり食べ物も喉を通らないように見えてくる。

 これこそが編集の妙であり、映画の大きな魅力の1つと言えるだろう。後にソ連映画作家クレショフの実験によって、「クレショフ効果」として知られることになる映画の大きな魅力の1つが。理論的にではなくとも、この映画の作り手はそのことを感覚として知っている。その感覚が、この作品を魅力的な詩にしている。