早川雪洲出演作「THE WRATH OF THE GODS」

 日本語題「火の海」 製作国アメリ
 ニューヨーク・モーション・ピクチャー・コーポレーション製作 ミューチュアル・フィルム配給
 監督レジナルド・ベイカー 製作・脚本トマス・H・インス 出演 早川雪洲 青木鶴子

 鹿児島県、桜島。日本人の若い娘のトーヤさんには、結婚すると桜島が噴火してすべてを破壊するという呪いがかけられていた。しかし、船の難破で漂流してきたアメリカ人の水兵と恋に落ちたトーヤさんは、結婚することを決意する。

 早川雪洲がスターの座を掴んだ「チート」(1915)が公開されるのは翌年のことである。1914年はトマス・H・インスの元で映画に出演していた1914年だけでも15本以上に出演しているから、かなりのペースで映画に出演していたことになる。

 「火の海」の主演は早川ではなく、早川の妻でもある青木鶴子である。自分には責任がない呪いによって苦しむが、アメリカ人男性によって助けられるヒロインの役どころである。早川よりも先に青木がインスの目に留まって映画出演するようになったこともあり、早川は助演といった役回りだ。

 国辱的と言われたりもしたようだが、その最大の理由は早川と青木が演じる日本人の父親と娘が、仏教を捨ててキリスト教の助けを借りようとするところだろう。確かに、キリスト教の方が正しいかのように描かれている。早川演じる父親は仏像を破壊して、木で作った十字架をあがめるシーンはやりすぎに感じられる。だが、日本人の格好などには不自然さは感じられなかった。とはいえ、不自然さを感じるほど、日常生活などが描かれていたわけではないが。

 ハイライトは、桜島の大噴火である。ミニチュアを駆使した映像は今見るとチャチに見えるが、赤く染色されたフィルムと舞い上がる噴煙の効果は見事だ。

 日本人が主演した作品自体が珍しかった時代である。当時のアメリカ人には、日本人という存在自体がスペクタクルだっただろう。それに桜島の噴火が加われば、スペクタクル作品としては十分だったのかもしれない。