アドルフ・ズーカーのフェイマス・プレイヤーズ社とメアリー・ピックフォード

 アドルフ・ズーカーのフェイマス・プレイヤーズ社は、メアリー・ピックフォードの作品を中心に映画製作を行っていた。「蝶々婦人」(1915)では、著名な舞台人のデイヴィッド・ベラスコが演出を行った。

 メアリー・ピックフォードは当時、大衆の人気を勝ち取り、スターの座を手に入れていた。そんな、ピックフォード(と彼女の母親)は、ズーカーに対して高級を要求するようになった。千ドルだったピックフォードの週給は、1915年に4千ドルに、1916年には1万ドルにと跳ね上がっていくことになる。

 ピックフォードは高給だけではなく、出演作を思い通りに作る権利も得ていた。ズーカーはピックフォードに脚本家を選び、監督に属すべき特権を与えたのだった。その結果ピックフォードは、説教臭がなくユーモアと楽天主義に、破壊的なドタバタを加えた作品群に出演していくことになる。

 「ぼろ」(1915)でピックフォードが演じたのは、男友達にふられてやけくそに振舞うが、再び言い寄って許しのキスを得るというキャラクターである。思春期の少女役の女性的な面も表現したキャラクターで、ピックフォードの演じた役柄の中で、今では忘れられている面が現れているという。

 D・W・グリフィスの「国民の創生」(1915)に対抗して、エドウィン・S・ポーター監督によるスペクタクル大作「永遠の都」(1915)も製作されている。



(映画本紹介)

スターダム―ハリウッド現象の光と影

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銀幕を飾った映画女優を分析した一冊。単なる紹介ではなく、時代背景や映画の変遷と絡めて書かれた底の深さは、一読に値する。