映画評「IN THE TENNESSEE HILLS」

 トマス・H・インス製作、チャールズ・レイ主演
 ケイ・ビー・ピクチャーズ製作、ミューチュアル・フィルム・コーポレーション配給

 田舎に住む貧しい青年ジムは、病気の母親と住んでいる。家賃を払えないジムは、知り合いに金を借りに行くが、その間に借金取りが病気の母親を外に追い出し、母親はショックで死んでしまう。ジムは、母親の復讐のために借金取りを殺すが、今度は逆に借金取りから命を狙われる。

 貧しい家庭に病気の母親という設定は、D・W・グリフィスの作品にも多くある。だが、グリフィスがこの設定を使うのが主に都会のアパートなのに対して、トマス・H・インス製作のこの作品は田舎が舞台となっている。また、グリフィスの作品の貧しい家庭の青年が主にとてもいいヤツなのに対して、この作品の主人公の青年はどこか弱々しく、陰湿な印象を受ける。

 演出は手堅く、ロケが効果的に行われて、映画にリアリティを与えることに成功しているように感じられる



(DVD紹介)

「NICKELODIA 1」

 ニッケル・オデオン期の作品を集めたDVDとされているが、収録されている作品の年代(1911〜1915)は正確にはニッケル・オデオンがかなり衰退して、消滅した時期だ。という細かい点は無関係に、あまりメジャーではないサイレント期のD・W・グリフィスやトマス・H・インス、「ブロンコ・ビリー」の作品が見られるありがたいDVDである。