映画評「YOUNG ROMANCE」

 ラスキー・フィーチャー・プレイ社による作品。ジョージ・メルフォード監督。セシル・B・デミルの兄であるウィリアム・C・デミルが脚本を担当している。

 上流階級の生活に憧れる女性ネリーと、男性トム。二人は別々に、偽名を使って上流階級の人々が集まる海辺のホテルへとやって来る。そこで出会うネリーとトムは、互いの正体を知らない。そんなとき、ネリーを本物の上流階級の女性と思い込んだ詐欺師が、ネリーを誘拐してしまう。

 脚本も担当しているウィリアム・デミルが書いた舞台劇が元となっているというこの作品は、中流階級の男女を主人公にしたほんわかとした作品となっている。

 上流階級が集まるホテルのレストランで無理して食事をするネリーとトム。トムは金が心配でたまらないが、一方でネリーもどこか落ち着かないといったギャグは定番ながらも、微笑ましい。ネリーが偽名を使った女性を知っている人々が現れてネリーは慌てるが、10歳の時以来会っていないために助かるという展開もまた、微笑ましい。

 後半のネリーが誘拐されてトムが助けに向かうという展開はありがちだし、D・W・グリフィスを始めとして多くの短編でも描かれてきたものということもあり、面白みはない。救出劇に取り立てて工夫が凝らされているわけではないという理由もある。

 夢の上流生活を送ったネリーとトムは、互いのことを本当の上流階級の人間だと思っているため、自分の本当の姿を伝えることなく別れる。その後のエピローグでは・・・まぁ、誰もが予想できるものだ。

 こういった中流階級を扱った微笑ましいコメディというのは、当時は多く作られていたのかもしれないが、現在ではあまり名前が残っていない。だが、技術的にも内容的にも話題を呼ぶわけではないが、ちょっとした楽しみとしては十分なこういった作品が、映画の人気を高めることに貢献したのではないかと、そう思う。

Regeneration [VHS] [Import]

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