エッサネイ時代のチャップリンの作品「チャップリンの舟乗り生活(船乗り生活)」

 チャーリーはエドナと恋仲だが、船主のエドナの父親には反対されている。そんなチャーリーは、騙されて船員と働かされることになり、しかもエドナもその船に乗り合わせる。その船の船長たちは船を爆破して保険金をせしめようとしていた。その中心人物はエドナの父親だった。

 「船」という舞台に、チャーリーを飛び込ませたらこんなギャグになりました、といった感じの映画。積荷の運搬ではチャーリーが指示係になったものだから、めちゃくちゃ。船酔いを起こしたチャーリーの横で、モリモリと肉を食ったり、ランプのオイルをドレッシング代わりにサラダを食ったりする船員に辟易するギャグなど、シチュエーションを生かしたギャグが満載だ。

 船の酔いを表現するために、室内を揺らすセットを組んだと思われるところから、チャップリンがセットに気を配っていることがわかる。また、カメラをほとんど動かさないチャップリンだが、船の揺れを表現するために、カメラをグラグラ動かしている(乱暴に動かしているだけで、表現として優れているとは思えなかったが)。

 この作品では、チャップリンのすばらしい芸を見ることができる。それは、食器の乗ったトレイを運ぶが、船が揺れて転んでしまうシーンだ。チャーリーはいくら転んでも、トレイの上の食器を落とさないのだ。この芸はさりげなく描かれているが、すばらしい。ちなみに、私は小学生のときに、このシーンを見て、家で練習したことがあった。

 チャップリンは、徐々に安易なドタバタ喜劇を作らなくなってきた。1つ1つの作品に個性が見られるようになってきた。


チャップリン・ザ・ルーツ 傑作短編集・完全デジタルリマスター DVD-BOX

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