“水着美人”アネット・ケラーマン

 この年の話題作の1つに「神々の娘」(1916)がある。話題になった理由は、水着美人と言われたアネット・ケラーマンが出演していたからだ。ケラーマンはオーストリア出身で、小児麻痺を水泳で克服した過去を持っており、テムズ川の40キロ遠泳に成功したことでも知られていた。以前より映画界で活躍しており、「神々の娘と同じハーバート・ブレノン監督「ネプチューンの娘」(1914)にも出演していた。

 「神々の娘」では、ケラーマンのヌードシーンも話題を呼んだ。ジャマイカでロケを行ったが、蚊による病気を心配して特別な衛生施設を作った。他にも、プールのセットには2,500バレルの石膏、500バレルのセメント、200万フィートの木材、10トンの紙を使用するなど多額の金を使った。延べ2万人を雇い、8ヶ月の撮影期間がかけられたという。こうして作られた映画の製作費は、100万ドルに達したという。製作したフォックス・フィルムのボスであるウィリアム・フォックスは高いコストに怒り、ブレノンの名前を映画から外したが、後に訴えられてフォックスは敗訴している。

 ケラーマンは、その後も数本の映画で水泳を披露して、1930年代に引退している。