キーストン社の作品「FATTY AND MABEL ADRIFT(デブと海嘯、デブ君の漂流)」

 キーストン社製作
 監督・出演ロスコー・アーバックル 出演メイベル・ノーマンド、アル・セント・ジョン

 結婚したファッティとメイベルは、メイベルの両親に買ってもらった岸辺の家に住んでいる。ある日、メイベルに恋をしていて振られたアル・セント・ジョン演じる男と悪者たちが、2人が寝ている間に家を海に流してしまう。目覚めて家が海に漂っていることに気づいたファッティとメイベルは愛犬にメモをくくりつけて助けを呼ぶ。

 ストーリーはキーストン社で製作されたアーバックルの作品によく出てくるパターン。だが、規模が大きくなっている。上映時間も30分強と、これまでのアーバックルの作品よりも長めのこの作品は、実際に家を海に浮かべたり、おなじみのキーストン・コップたちがモーター・ボートに乗って活躍(高波で転覆する)する。同じようなストーリー、同じようなキャラクター、同じようなパターンながら、規模を大きくすることで観客の興味をひきつけようという意思が感じられる。

 規模が大きくなったことも原因のひとつと思われるが、初期のキーストン社のコメディと比較すると、展開がスムーズできちんとした計画の元に作られている印象を受ける。ファッティとメイベルが愛し合っているという表現も、単純にくっついていちゃいちゃするだけではなく、ファッティが影を使ってメイベルにキスをして見せたりといった映画的な手法が駆使されている。このあたりにも映画全体に計画性が漂っている。

 映画のコメディが、徐々に洗練されていくのがアーバックルの作品をみていくとよくわかる。