ドロシー・ギッシュ主演「GRETCHEN THE GREENHORN」

 ファイン・アーツ社製作 出演ドロシー・ギッシュ

 オランダから父のいるアメリカにやってきたグレッヒェンは、イタリアからの移民であるピエトロと恋に落ちる。一方、グレッヒェンの父であるヤンの器用さに目をつけたギャングの一味であるロジャースは、ヤンをだまして偽札を印刷するためのプレートを作らせる。さらにロジャースは、口封じのためヤンを誘拐するのだった。

 ドロシー・ギッシュといえば、リリアン・ギッシュの妹として知られた女優である。リリアンとドロシーは、D・W・グリフィス監督の「世界の心」(1918)や「嵐の孤児」(1921)といった作品で共演している。「世界の心」では快活な女性を、「嵐の孤児」では盲目の少女役を見事に演じているが、どちらも脇役だ。この作品でのドロシーは主演である。ドロシー・ギッシュの主演作は、当時多く作られたらしいがほとんどが現在残っていないと言われている。その意味で貴重な作品だが、ドロシー・ギッシュはそつなく演じているものの、それほど光っているようには感じられなかった(脇役の「世界の心」や「嵐の孤児」の方が光っているように思える)。

 この作品は、移民たちの生活を細かく描いた初期の作品の1つと言われている。イタリア人は陽気で女性に積極的だったりとステレオ・タイプな描き方がされているように思われるが、1時間弱の長編であることを活かして脇役にさりげなく移民たちの生活ぶりを挿入することで、映画全体に移民たちの生活の雰囲気が漂う作品となっている。

 映画の後半は、多くの映画でそうなるように、誘拐された人物の救出劇となる。この後もあらゆる映画にも使われるパターンで、演出などに面白味がないとかなり退屈なパターンだ。この作品は、スピーディに展開されていたので、それほど退屈さは感じなかったのだが。

 ちなみに、この作品を製作したファイン・アーツ社は、配給会社であるトライアングル社が作った製作会社であり、当時D・W・グリフィスが製作責任者を担当していた。この作品を製作当時のグリフィスは「イントレランス」(1916)にかかりきりで、この作品にはほとんど関わっていなかったと思われる。しかし、移民や下町に住む人々、ギャングや犯罪といった題材は、グリフィスが取り上げそうなもので、当時のファイン・アーツ社の路線の一端が感じ取れる。

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