リリアン・ギッシュ主演「SOLD FOR MARRIAGE」

 製作国アメリカ ファイン・アーツ・フィルム・カンパニー製作、トライアングル・ディストリビューティング配給
 監督クリスティ・カバン 脚本ウィリアム・E・ウィング 出演リリアン・ギッシュ、フランク・ベネット

 ロシアの農村。美しいマーファは貧しいヤンと恋をするが、マーファの家族は金持ちの中年男に嫁がせようとする。大佐との結婚も断ったマーファと家族は、アメリカへと渡る。アメリカでマーファとヤンは再会するものの、マーファの家族はアメリカの金持ちにマーファを嫁がせようとする。

 1916年と言えば、D・W・グリフィス監督による金字塔「イントレランス」(1916)が作られた年である。グリフィス映画の常連だったリリアン・ギッシュも「イントレランス」に出演している。その陰で、ギッシュが主演したのが、この作品である。

 ギッシュお得意の悲劇のはずなのだが、あまり盛り上がらない。ギッシュの演技は冴えているのだが、演出と編集が平凡だからだろう。例えば、ヤンがアメリカに行くことになりマーファに別れの挨拶に訪れたシーン。マーファは相手の手を思わず頬に持っていくという動きで、はちきれそうな胸の内を繊細に表現している。だが、演出によってマーファの動きが強調されることはない。むしろ、大げさに抱き合うシーンを付け加えることで、繊細な動きは台なしにされている。

 のんべんだらりとしたストーリー展開だが、後半はグリフィスが得意としたカット・バックによる「最後の救出」に試みている。だが、まったく盛り上がらない。映画にとって演出や編集がいかに重要かを再認識させてくれる映画だ。