メイ・マーシュ主演「HOODOO ANN」

 ファイン・アーツ社製作 トライアングル社配給

 監督ロイド・イングラム 監修・脚本D・W・グリフィス 出演メイ・マーシュ

 孤児のアンは、孤児院で仲間はずれにされている。ある日、孤児院で火事が起こり、アンは他の少女を助け出す。それを見ていたナップ家の人々の元に、アンは引き取られる。そんなアンは、隣に住むジミーと仲良くなって行く。

 メイ・マーシュは今ではほとんど名前を聞かない女優だが、当時は人気スターだった。D・W・グリフィスの「イントレランス」(1916)では現代篇のヒロインとして出演している。飛びぬけて美人というわけではないが、マーシュにはどこか目を放すことができない魅力がある。

 この作品でのマーシュは、メアリー・ピックフォード主演映画の役柄と同じような、13歳の孤児を演じている。正直、体格的には13歳は無理があるものの、仕草などは見事に13歳で、マーシュの実力を知ることができるだろう。ちなみに、マーシュはD・W・グリフィス監督の「ホーム・スイート・ホーム」(1914)では、西部の男勝りの酒場の女主人を演じている。そして、こちらも見事に演じきっている。

 ちなみに、この作品の脚本と監修にはD・W・グリフィスの名前がある。グリフィスは当時、ファイン・アーツ社のトップだった(マーシュは、そんなグリフィス組とも言える俳優の1人だった)。だが、「イントレランス」にかかり切りだったグリフィスは、他の作品は目に入っていなかったとも言われている。この作品に、グリフィスがどれだけ関わっていたかはわからない。

 ストーリーは他愛もないものだが、メイ・マーシュの演技に加えて、孤児院の火災のスペクタクルといった見所溢れる作品だ。当時の映画が、「イントレランス」のような大作だけではなく、この作品のような中の上的な作品によって支えられていたことは忘れてはならないだろう。