映画評「ドーグラスの厭世」

原題「FLIRTING WITH FATE」 製作国アメリ
ファイン・アーツ・フィルム・カンパニー製作
トライアングル・ディストリビューティング・コーポレーション配給
監督・脚本クリスティ・キャバンヌ 出演ダグラス・フェアバンクス

 貧しい画家のオージーは、上流階級のグラディスに一目惚れ。だが、告白の練習をグラディスの友達にしているところを、グラディスに見られてしまう。さらに、落ち込んだグラディスが別の男性になぐさめてもらっているところを、オージーは見てしまう。誤解が誤解を呼び、オージーはついに自殺を考える。

 明るいトーンのコメディである。オージーとグラフィスの誤解に見られるように、観客にすべてを先に教えるタイプのストーリーで、この手法が、後半の自殺するために殺し屋を雇い(自分を殺してもらうように)、取り消せないために常に脅えているオージーの描写の面白さもうまく醸し出している。

 ストーリー的には、この後に作られるハロルド・ロイドの作品に良く似ている。しかも、ロイドが演じたキャラクターと同じように、フェアバンクスも普通よりも少し運動神経が良い程度のキャラクターを演じている。ダグラス・フェアバンクスの同時期の作品は、この作品のようなコメディが多いのだが、ロイドが売り出した時期よりも早い点は覚えておいてもいいだろう。

 演出面でも工夫がされている。殺し屋の襲撃に脅えるオージーは、身の回りの人や物が、自分を殺すためにやってきた人や物に見えてしまう。ここでは、殺し屋が自分を殺す方法が空想のシーンとして表現されている。このときの殺し屋の大げさな演技は、黒バックで演じられていることもあり、シュールな面白さを生み出している。

 この頃のダグラス・フェアバンクスの作品は快活で楽しい。後の大作では、フェアバンクスは巨大な設定やセットの狭間で、部品の一つのように感じられることも多々ある。邦題にあるように、この頃の作品はまさにドーグラス(Douglas)が映画の中心にいて、魅力を放っている。