映画評「THE MYSTERY OF THE LEAPING FISH」

 トライアングル社製作 
 監督ジョン・エマーソン 脚本トッド・ブラウニング 主演ダグラス・フェアバンクス

 私立探偵であるコーク・エニデイは、数々の発明品とコカインの力を借りて、麻薬密売で儲ける組織を撲滅するために活躍する。

 まだスターとして人気を得る前のダグラス・フェアバンクス主演作品である。「奇傑ゾロ」(1920)のような、ヒーローもののスターとしてのイメージしか知らないこともあり、この作品のフェアバンクスには少し驚いた。フェアバンクスは動きといい、表情といい、まさにコメディアンといっていいだろう。しかも、見た目や動きで笑わせるタイプのコメディアンだ。

 フェアバンクスの動きは特に軽快で(特にラリったときに見せるステップは見事)、カラっとした明るさを持ってはいるものの、コメディとしてはそれほど面白いといえるものではないように感じられた。アクロバティックな動きも見せてくれない。それよりも、フェアバンクス演じる主人公の探偵が麻薬中毒者であるという設定の方がおもしろい。シャーロック・ホームズがコカイン愛用者として描かれていることからもヒントを得ているのかもしれないこの設定は、現在とは違って当時はコカインが強壮剤として認められていたという事実に基づいているという点は忘れてはならないだろう。

 とはいえ、コカインの害も認識されており、D・W・グリフィスは「FOR HIS SON」(1912)という作品で、麻薬中毒について警鐘を鳴らす作品も製作しているという点などを考えると、コメディの主人公だからこそ許される設定だといえるだろう。