映画評「THE OCEAN WAIF」 アリス・ギィ監督作

 ゴールデン・イーグル・フィーチャーズ インターナショナル・フィルム・サーヴィス ソラックス・フィルム製作
 インターナショナル・フィルム・サーヴィス配給
 監督アリス・ギィ

 小説家のロナルドは、小説の執筆のために訪れた田舎で、養父の虐待から逃げてきたミリーと出会う。二人は愛し合うようになるが、ロナルドには婚約者が。そのことを知ったミリーは、養父の元へと戻る。養父は、血のつながっていないミリーと結婚しようと迫るが、ミリーに思いを寄せていた近所に住むセムが養父を撃つ。

 世界初の女性映画監督として、1890年代末から1900年代始めまでフランスのゴーモン社で活躍した後、夫と共にアメリカにわたり映画を監督したアリス・ギィの監督作である。当時ギィは、新聞王として知られるウィリアム・ランドルフ・ハーストが所持していたインターナショナル・フィルム・サーヴィスの、雇われ監督として活躍していたという。

 失われたシーンが多くあるため一概には言えないが、ストーリーが字幕で語られる部分が多く、映像として語られるという感じはあまりしなかった。だが、分かりやすく、感情移入しやすいストーリーは40分間を楽しませてくれるに十分だった。

 特筆すべきショットが1つある。それは、キス・シーンだ。風に吹かれる中、情熱的にキスをするロナルドとミリーのショットは、この後のアメリカ映画が様式美として発展させていくキス・シーンを思わせる。少なくとも、私が見てきた、この作品までに作られた映画では見られないものだった。これが、女性監督のギィならではの感覚なのかどうかは分からないが。