「移民」 チャップリン映画の集約的作品
チャールズ・チャップリンの「チャップリンの移民」は、ギャグとペーソス、社会批判というチャップリンの映画の主要素としてこの後も受け継がれていくものが詰まった作品として、高い評価を受けている。「フォトプレイ」誌は、「O・ヘンリーの短編にも似た宝石」と賞したという。
「移民」には、チャップリンがアメリカに到着したときの思い出を盛り込んでいるという。それは、楽園が待っていると思っていた人々を待ち受けた苦しい生活、失業、賃金の低い仕事といった暗い側面である。この点を象徴的に表現した、到着したばかりの移民を警官たちが家畜のように扱うシーンは、第一次大戦中の再公開ではカットされた。ジョルジュ・サドゥールは、チャップリン映画に登場するチャーリーはすべて「移民」であった点を指摘している。「移民」のラストは「ハッピー・エンド」でありながら、物悲しさが残る。
「移民」の撮影は、「レストランのシーン」「船のシーン」という完成した映画とは逆に撮影が行われ、自由の女神のシーンは後で追加されたという。また、チャップリンは元々パリを舞台にしたコメディを作る予定であり、最初の頃のレストランのシーンのイメージはパリのものだったと言われている。これらのことから、1917年2月に制定された移民制限法が、チャップリンを現実的なテーマに向かわせたのではないかという指摘もある。
チャップリンの映画製作は、「移民」に見られるように、最初から完成された脚本にしたがって撮影されるのではなく、即興とアイデアによって作られていった。チャップリンは当時の映画製作を、「自らを迷路に追い込んで、それから出口を探す、といった感じだった」と後に語っている。
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