チャップリンの模倣者たち
1917年は、チャールズ・チャップリンにとって映画製作とは別のアクションを起こした年でもあった。チャップリン映画の模倣者に対して訴訟を起こしたのだ。訴訟の対象となったのは、モノマネ芸人ではなく、自分たちこそがオリジナルだと主張する人々に対してであった。対象となった人物には、ビリー・ウエストやビリー・リッチーといった人物がいる。
ビリー・ウエストは、最も成功した模倣者と言われている。ロシア移民で、寝るときは髪をカールにして、ヴァイオリンを左利きで練習したという。1917-1918年に「KING BEE COMEDIES」として映画製作を開始し、約50本を製作したという。脇役や人物設定やプロットまでコピーし、巨漢悪役としてオリヴァー・ハーディが出演したという。また、チャップリンの実際の共演者だったレオ・ホワイトまで出演していたという。初期のチャップリン映画のコピーだったウエストの映画は、後にチャップリンの未発表初期映画とされたり、チャップリン映画としてテレビ公開されたりした。
ビリー・リッチーは、カーノー劇団のおけるチャップリンの先輩にあたる人物である。1914年7月にキーストン社から独立してL−KOスタジオを設立したパテ・レアマンと映画製作を行った。リッチーは、自分が扮装のオリジナルとして、裁判でも譲らなかったという。だが、キャラクターは異なり、棍棒で叩かれても痛くないといったギャグを得意とした。そんなリッチーは、1921年にダチョウに激突して死亡している。
チャップリンはこの後も多くの映画を製作していくが、「冒険」以降の作品は模倣されなかったという。たとえば、ビリー・ウエストは1921年に出演した「Cleaning Up」で「冒険」のギャグを模倣している。1921年と言えば、「犬の生活」(1918)といった作品がすでに製作されていたが、それらの作品は模倣していてない。
この点を指摘し、大野裕之は「チャップリンのために」の中で、「チャップリン映画がもはや模倣・追随を許さない高みまで達した」と語っている。
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