バスター・キートンのデビュー
チャールズ・チャップリン、ハロルド・ロイドと並んで、サイレント期の3大喜劇王の1人に称されるバスター・キートンがこの年、映画デビューを果たしている。
キートンはニューヨークのブロードウェイの路上でたまたま友人から紹介されて知り合いになった、ロスコー・ファッティ・アーバックルの映画に共演の形で出演するようになった。かつてマック・セネットのキーストン社の人気コメディアンだったアーバックルは、ギャラの面でセネットと折り合わなくなり、1916年にパラマウントのジョゼフ・スケンクの元に移籍していた。
誤解されがちだが、当時活躍していたコメディアンの多くはキーストン社の出身だったが、キートンは違う。キートンが出演する前からアーバックル作品に出演していたコメディアンのアル・セント・ジョンは、キーストン出身だった。アルは長年のコメディ出演での転ぶ演技のために、ヒジに水が溜まっていたという。キートンはそんなアルに体を傷つけない転び方を教えてあげた。キーストン社が自然なおもしろさを求めて、軽業ができる役者を雇わず、アルのような役者に転ぶ演技をさせていたと言われている。
1917年にキートンは、アーバックル主演の「おかしな肉屋」「入婿」「結婚」「医者」「浜遊び(コニー・アイランド)」に出演している。
キートンの最初の週給は40ドルだったが、6週間後に75ドル、まもなく125ドルになった。当時キートンは、舞台ではもっと稼げたが、映画を選んだ。
キートンはアーバックルのことを「いい奴」と評し、アーバックルから映画作りを教わったと語っており、意見が合わなかったのは1度だけだったという。それは、アーバックルが「観客の頭は平均12歳だ」と言うのに、キートンは反対したときであり、キートンは自伝で次のように語っている。
「観客の知能を見くびることは、私が見るところ今日のハリウッドにも延々と残っている。もし撮影所の親分たちがこの伝説を否定してさえいれば、テレビが−たとえ無料だろうが有料にしようが−こんなに早く映画産業を乗っ取ってしまうことはなかったんじゃないかと思えてならない」
ちなみに、ヴォードヴィル役者だったキートンの父親もアーバックルの映画に2,3回出演している。
(映画本紹介)
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