バスター・キートン出演作「入婿」

 原題The Rough House 製作国アメリ
 コミック・フィルム製作 パラマウント・ピクチャーズ配給
 監督・脚本・出演ロスコー・アーバックル 出演バスター・キートン アル・セント・ジョン

 婿養子のファッティは、火事を起こすし、コック(アル・セント・ジョン)や配達に来た男(キートン)とトラブルを起こすし、しかも浮気まで疑われて給仕係にさせられてしまう。妻や義母が男性2人を呼んで食事をするが、ファッティはここでもミスばかり。しかし、男2人は実は強盗目的で、ファッティは警官と共に2人を捕らえる。

 アル・セント・ジョンやキートンとのドタバタは、最後にはパイ投げの要領で皿を投げたり、こねた小麦粉のようなものを投げたりするのだが、ここでもかなりの混沌を見せてくれる。この混沌は、同時期のチャールズ・チャップリンが洗練へと向かっていたのとは異なった魅力を持っている。マック・セネット映画(チャップリン映画以外はそのほとんどが日本ではあまり見られない)の魅力が混沌にあったらしいが、セネットの元で育ったアーバックルの映画にもセネット映画の混沌の魅力がある。

 混沌を増すために、倒れたファッティの周りに合成で星を飛ばしたり、キートンが投げた包丁をアルが歯で受け止めたりといったシュールなギャグもある。このへんも、チャップリン映画にはない魅力を放っている。後半は、かつらを取ってしまい、もとに戻そうとしてバターを塗ってもう1度つけたりと、小道具を使ったギャグもある。

 セネット映画(チャップリン映画にも)登場するキーストン・コップを真似たような警官たち(キートンとアルら)が、強盗の報を聞きつけ、飛んだりはねたりしながら現場へと走っていく様子も、ただそれだけで心地よい疾走感を感じさせる。これもチャップリン映画にはない魅力だ。

 しかし、後年のチャップリン映画に登場する名ギャグが、この作品にも登場していた。それは、ロールパンにフォークを刺して、足に見立ててダンスを踊るというギャグ。そう、「黄金狂時代」(1925)でチャップリンが披露することになるギャグそのままなのだ。アーバックルは、チャップリンほどじっくりとこのギャグを撮っているわけではないので、さらりと流されてしまうのだが、このことは記憶にとどめておいてもいいかもしれない。

 キートンはこの映画でも、それほど存在感を発揮してはいない。



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