メアリー・ピックフォード主演作「A LITTLE PRINCESS(小公女)」
メアリー・ピックフォード・カンパニー製作 アートクラフト・ピクチャーズ配給
監督マーシャル・ニーラン 出演メアリー・ピックフォード
アメリカの小説家フランシス・ホジソン・バーネットによる児童文学「小公女」の映画化作品。
母のいないセーラは、イギリスの女学校に入学し、父親とも離れて生活を送る。セーラの父親が急死し、セーラは生徒ではなく、小間使いとして女学校で生活を送ることになる。そんなセーラを見た隣に住む中年の金持ち男性がセーラの父親と親友だったことが分かり、セーラは引き取られることになる。
メアリー・ピックフォードといえば、金髪巻毛の少女役で人気を得た女優である。女優として初めて国民的な人気を得た女優であり、100万ドルを初めて稼いだ女優とも言われている。この映画が公開された当時はすでにその人気は確立されており、自身の製作プロダクションを持っていたほどだった。
この作品でピックフォードが演じるのは、10歳の少女セーラ役である。ピックフォードは自身の興行価値をしっかりと把握しており、不幸な境遇に陥りながらも健気に頑張って生きる少女という観客の共感を呼びやすいキャラクターとなっている。
10歳と言われるとさすがに厳しいように思えるが、「少女」と言われればしっくりくる見事な演技を見せてくれる。また、最初の登場のときに、ピックフォード演じるセーラの周りの男性の俳優に長身の者を揃えることで、152センチと小柄なピックフォードがさらに小さく見えるようにも作られている。そして、最初に「小さい」というイメージが植えつけられると、その後は多少不自然な部分も許せてしまうように感じる。
ストーリーは、セーラが女学校に預けられてから、父親の死によってどん底に落とされ、父親の親友の富豪によって再び幸せを得るまでが、それほどの盛り上がりも見せずに進んでいく。特に、父親の死以後も、あまりセーラが不幸なようには私には見えなかった。
メインのストーリーの盛り上がりの替わりというわけではないのだが、途中にセーラが他の女学生たちに語るという形で、「アリ・ババと40人の盗賊」のストーリーが挿入されている。このサブ・ストーリーで、ピックフォードは大人の女性を演じてみせる。アレグザンダー・ウォーカーは当時のピックフォードが、大人の女性を演じたいという自らの思いと、大衆の希望に応えるという職務の狭間にあって、この作品のような一人二役を演じたという指摘をしているが、その1つの例と言えるだろう。
脚本を書いたのは、後にアカデミー賞のオリジナル脚本賞も受賞する女性の脚本家フランシス・マリオンである。マリオンはピックフォード作品の脚本を多く書いている。
この作品は、「少女役で人気を得た」という、日本語の様々な本でも書かれているメアリー・ピックフォードについての情報を体感するに十分な作品である。そして、ピックフォードの自我と職務のバランスの取り方についての知ることができる。作品としては、それほど面白いとは思わないが。
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