メアリー・ピックフォード主演作「THE ROMANCE OF THE REDWOODS」

 アートクラフト・ピクチャーズ、パラマウント製作 アートクラフト・ピクチャーズ配給
 製作・監督・脚本・編集セシル・B・デミル 出演メアリー・ピックフォード

 東部から西部へやって来たジェニーだったが、頼りにしていた叔父は死んでおり、“ブラック”ブラウンという強盗が法の網から逃れるために叔父になりすましているのを知る。

 この頃のデミルは、パラマウントおよびパラマウントのグループであるアートクラフト配給作品を監督しており、「チート」(1915)の成功などでトップ監督の地位を築いていた。一方、ピックフォードの人気は高まり、この頃には「アメリカの恋人」とまで呼ばれるようになっていた。会社側はそんな二人を放っておくはずがなく、デミル監督・ピックフォード主演のコンビ作が生まれた。

 デミルは当時、舞台劇の映画化を多く行っていた。この作品は、後のデミル監督のセックス・アピール路線を脚本面で支えるジェニー・マクファーソンが、シナリオを担当している。話はそこそこ複雑でありながら、主要登場人物を2人に絞りながり、複雑になり過ぎないようになっている。また、ピックフォード演じるキャラクターは無垢に描かれ(愚かに見えるほどだが)、恋してしまったブラウンが殺されそうになるときに助命を嘆願するシーンでは、哀れさを誘うのに十分な設定になっている。また、ピックフォードも見事にそのキャラクターを演じている。

 ピックフォードといえば少女役、それもローティーンの少女役というイメージが強いが、決してそのような作品ばかりではないことを、この作品は教えてくれる。1人で東部から西部に移り住むことになるジェニーは、10代後半から20歳くらいに見えた。ピックフォードは無理なく演じている(実際のピックフォードは映画が公開された年には25歳だったので無理の必要もないが)。

 以上のような特徴を挙げてみたが、ピックフォードに息を呑むほどの素晴らしさは感じなかったし、デミルの演出にもこれといった特徴はなかった。デミルとピックフォードという2大映画人による映画製作は、ビッグ・ネーム同士がぶつかるとよくあるように、互いの領分を侵すことなく、無難にこなされているように感じられる。