映画評「THE POOR LITTLE RICH GIRL」

 製作国アメリ
 製作・配給アートクラフト・ピクチャーズ・コーポレーション
 監督モーリス・トゥルヌール 脚本フランシス・マリオン 出演メアリー・ピックフォード

 少女グウェンは裕福だったが、忙しい両親と会う時間がなく寂しい思いをしていた。

 メアリー・ピックフォードといえば少女役で人気を得たことで知られている。この作品は、そんなピックフォード人気を完全に確立した作品と言われている。当時24歳だったピックフォードは、セットを大きくしたり、大き目の役者を配するなどの工夫のおかげもあり、10歳の役柄を演じることに成功している。

 ストーリーとしては、正直よくあるものだ。展開は予想がつく。ピックフォードは見事にかわいそうな少女を演じているものの、ストーリーの安易さはそれだけでは救えなかったことだろう。

 この作品が活気づくのは、グウェンが悪夢にうなされるシーンの描写だろう。グウェンの味方をしてくれた人々(ライオンの姿をして登場する者もいる)と、グウェンは一緒に様々な場所に向かう。向かった先では、これまでに聞いた多くの比喩そのままの人々が待っている。例えば、「2つの顔を持つ(二面性がある)」と言われたメイドは、阿修羅のように実際に2つ顔を持ち登場する。このシュールな夢のシーンが、ビジュアル的に非常に楽しませてくれる。ストーリーの単調さによるつまらなさを、ひと工夫で救っている。

 フランシス・マリオンによる脚色上のひと工夫と、モーリス・トゥルヌールの淀みない演出により、メアリー・ピックフォードの少女役は光を放っている。もちろん、ピックフォードの演技の素晴しさを抜きに語ることはできないものの、ピックフォードの映画が人気を得たのは様々な工夫によって生まれた映画が面白かったからだということを教えてくれる。