映画評「農場のレベッカ」

 原題「REBECCA OF SUNNYBROOK FARM」 製作国アメリ
 製作メアリー・ピックフォード・カンパニー
 配給アートクラフト・ピクチャーズ・コーポレーション、パラマウント・ピクチャーズ
 監督マーシャル・ニーラン 脚本フランシス・マリオン 出演メアリー・ピックフォード

 レベッカは優しい母親の元を離れて、厳格で意地悪な伯母に預けられる。しかし、レベッカはくじけることなく、元気に生活していく。

 メアリー・ピックフォード演じるレベッカは、とにかく元気だ。このことが、「農場のレベッカ」の最大の魅力であり、最大の弱点であるように感じられる。レベッカが元気で前向きすぎるため、物語は波乱万丈になることはなく、ただひたすらにレベッカの生き生きとした姿を描写することになる。

 これでいいのだと思う。当時の人々は、メアリー・ピックフォードの映画に元気をもらったのだろう。今から見ると、平板な展開に思われるかもしれない。意地悪な伯母さんも、ピックフォードにとってはたいした障害にはならない。しかし、ピックフォード演じるレベッカが元気なことは伝わってくる。

 演出も全体的に平板だが、ラストがいい。成長したレベッカと、レベッカが憧れていたアランが再会する。アランはレベッカを抱き寄せて、キスをしようとするが、レベッカは恥ずかしがって走って逃げる。追いかけるアラン。2人の姿は画面から消えて、しばらくそのまま、やがて画面は暗くなって映画は終わる。この「しばらくそのまま」がいいのだ。2人がキスをするシーンは画面には映らない。しかし、見ている者の脳の中には、「しばらくそのまま」の時間の間に、2人がキスしている姿が思い描かれるだろう。具体的な姿は観客の想像力にゆだねられている。そして、それぞれが最も好きな姿を脳裏に思い浮かべて、幸せな気持ちになることができる。これが、映画の演出というものではないだろうか。