映画評「一門の誇」

 製作国アメリカ 原題「THE PRIDE OF THE CLAN」
 メアリー・ピックフォード・カンパニー製作 アートクラフト・ピクチャーズ・コーポレーション配給
 監督モーリス・トゥルヌール 出演メアリー・ピックフォード

 舞台はスコットランドの小さな漁村。コミュニティのリーダーである父が亡くなった後、娘のマーゲットがリーダーの後を継ぐ。マーゲットは同じ村に住むジェイミーと恋に落ちるが、ジェイミーがイングランドの金持ちの息子であることが分かる。

 1917年当時のピックフォードは人気が上り調子であり、7本の作品に出演している。子役のイメージが強いピックフォードが当時演じられた役柄を見ると、年齢に相応の作品にも多く出演している。「一門の誇」の実年齢に近い役柄である。

 父の後を継ぐようになるまでの前半は、ストーリーの展開を字幕に頼っている部分が多く、ピックフォードの魅力もあまり感じることができなかった。だが、1枚の硬貨を割ったそれぞれの破片を、マーゲットとジェイミーが愛の証しとして持つ村祭りのシーンでは、ピックフォードは愛らしい演技を見せる。また、その後のジェイミーとマーゲットが寄り添うシーンでは、絵画的な映画を監督したといわれるトゥルヌールらしい逆行を利用した影の演出による美しさを見せてくれる。

 ピックフォード主演作の中では知名度が低い。地味な展開だし、少し字幕に頼り過ぎている。それでも、ピックフォードらしさ、監督のトゥルヌールらしさを垣間見ることができる作品である。