映画評「THE NARROW TRAIL」

 製作国アメリカ アート・クラフト・ピクチャーズ・コーポレーション製作・配給
 ウィリアム・S・ハート・プロダクションズ製作 パラマウント・ピクチャーズ配給
 監督・脚本・出演ウィリアム・S・ハート 監督ランバートヒルヤー 製作トマス・H・インス
 脚本ハーヴェイ・F・シュウ 出演シルヴィア・ブリーマー、ミルトン・ロス、ボブ・コートマン

 盗賊のハーディングは、美しい女性ベティに一目惚れ。だが、ベティは身分を偽っており、ベティが酒場で娼婦をしていることを知ったハーディングは怒り狂う。

 良い悪人「グッド・バッド・マン」で人気を得ていたハートは、長編に乗り出していた。この作品は、ハートによる最初期の長編の1つで、典型的な「グッド・バッド・マン」映画といえる。だが、他のハート作品と異なる点もある。

 何よりも他のハート作品と異なるのは、死人が出ないという点だ。殺人よりもハートの罪が軽いためか、ハートの葛藤は軽く描かれ、それよりもハート演じるハーディングとベティのロマンスに時間を割かれているし、何よりもラストはハッピー・エンドだ。

 アクションが多い点も、この作品の特徴だ。ベティが娼婦であることを知ったハーディングは、怒りを周りの男たちにぶつける。酒場を舞台にしたハーディングと男たちの殴り合いのアクションは、他のハート作品と比べて時間が費やされている。さらには、ラストはハーディングと愛馬キングがタッグを組んで臨む競馬レースにも多くの時間が割かれている。

 この作品は美しい馬と、美しい女性よって、盗賊から足を洗うという内容を、非常にストレートに、さわやかに描いた作品だ。颯爽とベティを抱えて、愛馬キングに乗って去っていくハーディングの姿は、同じ「グッド・バッド・マン」でも、罪の軽い「グッド・バッド・マン」だ。そんなハートも悪くない。