ヴィクトル・シェーストレーム監督作「波高き日」

 原題「TERJE VIGEN(A MAN THERE WAS)」 製作国スウェーデン スヴェンスカ社製作
 監督・脚本・出演ヴィクトル・シェーストレーム 製作チャールズ・マグヌッソン 原作ヘンリック・イプセン

 舞台は19世紀初頭のナポレオン戦争の時代。イギリスの海上封鎖によって孤立した漁村に住むタリエ・ヴィーゲンは、飢えた妻と子供のために、小さなボートで離れた村に食糧を仕入れに行く。しかし、途中でイギリス海軍に捕まってしまい、5年の間刑務所に入れられてしまう。

 シェーストレームが国際的な成功を収めた作品としても知られる「波高き日」は、戦争、家族への愛、自然の厳しさ、復讐と許しといった様々な要素が絡み合った作品である。

 最大の特徴は、海が効果的に使われていることだろう。スペクタクルとしても、人生の厳しさの象徴としても、主人公ヴィーゲンの心理描写としても、海や波が効果的に使われている。海や波の荒々しさがあるからこそ、ヴィーゲンが墓場でたたずむシーンのシルエットを使った静かなショットが活きてくる。

 カットバックも効果的に使われている。それは、イギリス海軍のボートにヴィーゲンのボートが追われるシーンに見られる。ヴィーゲンが1人で必死で漕ぐ様子と、海軍の10人の兵士たちが合わせて漕ぐ様子のカットバックは、サスペンスを高めるとともにヴィーゲン1人だけの存在の小ささを感じさせる。

 「波高き日」は、海を効果的に使った描写と、しっかりとした演出・編集に裏付けられた作品だ。シェーストレームの腕前の確かさを感じ取ることが出来る。