ハリウッドがアメリカ映画の中心に

 アメリカの映画産業は世界市場を独占する勢いで発展していたが、その中心はハリウッドだった。ハリウッドは、「映画の都」「スターの都」として発展していった。

 カリフォルニアの地理的な距離はプラスに働き、遠くに旅をして仕事をすることは「格好のいいこと」と捉えられた。また、スターがカリフォルニアに到着する様子は王の巡幸に似た雰囲気を醸し出し、スターの神秘性を増した。そのほかにも、東海岸で振り出した小切手が西海岸に届くまで数日かかり、経済状態を良好に保つ一助となるといった経済的な利点もあった。

 スタジオでの映画製作において、1918年以後は照明の進歩によって太陽光線は不要となっていた。だが、浮世離れした享楽的雰囲気を作り出すために以後もガラス屋根付きの撮影所は作られた。

 第一次大戦でヨーロッパの国々の映画製作が滞ったこともあり、ハリウッドは世界で上映される映画の50パーセント占める作品を製作した。1918年当時の段階で70を越える撮影所がハリウッドにはあったという。また、映画に投資された資本の額でも、人口当たりの映画館数でも、アメリカは世界一となっていた。

 私たちがよく知っている世界の映画の中心であるハリウッドがいよいよ形作られてきていた。

アメリカ映画の文化史―映画がつくったアメリカ〈上〉 (講談社学術文庫)

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