「世界の心」以外のグリフィスとギッシュ

 「世界の心」で注目を集めたD・W・グリフィスだったが、パラマウント系のアートクラフト社のために映画を製作しており、映画作品の権利も会社に譲渡していた。その代わりにグリフィスは、1本あたり25万ドルと興行収益のかなりの割合を報酬として得ていた。

 そんなグリフィスは、「幸福の谷」(1918)という田園もののコメディをアートクラフトのために監督した。一人の青年が都会から故郷に戻り、実家の窮状を救う物語で、リリアン・ギッシュとボビー・ハーロン共演した。評判は上々だった。

 他にも、白人と黒人の兵士が和解するという内容の「人類の春」(1918)もリリアン・ギッシュ主演で監督している。このとき、リリアン・ギッシュが目をつけたカメラマンのヘンドリック・サートフが、グリフィスのカメラマンで長年の相棒であるビリー・ビッツァーに代わって、ワンシーンを撮影している。出来はよく、観客にも好評だったという。また、公開時のスチール写真もサートフが撮影したものを使ったという。グリフィスはこれらのことが気に入らなかったとも言われているが、後にサートフがグリフィスと特殊効果係として契約し、その後何本かの撮影も担当している。

 ちなみに、この頃のリリアン・ギッシュは、当時の享楽的なハリウッドにありながら、あまりパーティへは行かなかったという。もし、パーティに出かけても10時には帰り、翌朝8時には疲れを残さずに撮影現場に現れたと言われている。

リリアン・ギッシュ自伝―映画とグリフィスと私 (リュミエール叢書)

リリアン・ギッシュ自伝―映画とグリフィスと私 (リュミエール叢書)

D・W・グリフィス傑作選 [DVD]

D・W・グリフィス傑作選 [DVD]