セシル・B・デミル監督作「醒めよ人妻」

 原題「OLD WIVES FOR NEW」 製作国アメリ
 アートクラフト・ピクチャーズ製作・配給 フェイマス・プレイヤーズ=ラスキー配給
 製作・監督・編集セシル・B・デミル 出演フローレンス・ヴィダー

 金持ちのチャールズ・マードックは、美しかった妻ソフィーが年をとって太り、怠惰になってしまったことを嘆いている。ある時、息子とキャンプに出かけたチャールズは、若いジュリエットと知り合い恋してしまう。

 セシル・B・デミルは、この作品以前には主に史劇やスペクタクル劇を監督していたが、金のかかるこれらの作品よりも安価で儲かる現代劇を監督から依頼され、この作品のような現代劇を一時期監督するようになる。

 上流階級を舞台にした、他愛もないメロドラマといってしまえばそれまでだろう。そつなく演出されたストーリーは、淀みなく展開していく。ヒロインであるフローレンス・ヴィダーは、可愛らしくも少し地味な印象を受けた。

 この作品以後しばらくデミルが監督する現代劇は、セックス・アピールが売り物になっている点が特徴的だ。この作品でも、チャールズの愛人同士がケンカをするシーンにそれが現れている。髪がほつれて、服も剥ぎ取られたケンカの後の愛人たちの格好は、当時の基準では十分セックス・アピールの持ったものだったであろうことが予想される。

 最後には、チャールズは妻と離婚し、ジュリエットと結婚する(また、ソフィーも別の男性と結婚する)。離婚を肯定する内容は、当時のモラルとしては批判を受けやすかったのではないだろうかとも思われる。デミルの後の作品ではよりモラリスティックな結末が用意されている。

 ちなみに、アドルフ・ズーカーは、この作品を見たときに上映しない方がよいと考えたという。おそらく、セックス・アピールの部分と、離婚を肯定する内容のためではないかと思われるが、結局は試写で好評だったことから公開され、結果は大ヒットとなった。