映画評「愛に輝く眼」

 製作国アメリカ 原題「THE EYES OF JULIA DEEP」
 アメリカン・フィルム・カンパニー製作 パテ・エクスチェンジ配給
 監督ロイド・イングラム 出演メアリー・マイルス・ミンター、アラン・フォレスト、アリス・ウィルソン

 心やさしいジュリアは、アパートの階下に住むテリーが自殺しようとしているところを止める。放蕩な生活を送っていたテリーは、ジュリアの励ましもあって労働の喜びを知るように。2人は愛し合うようになるが、かつてのテリーの恋人が嫉妬から2人の中を裂こうとする。

 この後、パラマウントメアリー・ピックフォードの後釜として売り出されるミンターは、それも頷ける魅力あふれる演技を見せている。全身で時に快活さを、時に優しさを表現するピックフォードとは少し異なり、ちょっとした表情で優しさを表現している。監督のイングラムもそれを知ってか、タイトルにもある眼を始めとして、ミンターの表情を捉えることを忘れていない。

 暖かさと優しさに溢れた中盤だが、後半はコメディを思わせる展開となる。この急展開は映画全体のバランスを少し壊しているようにも感じられたが、後のスクリューボール・コメディを思わせるという指摘も頷ける、ハチャメチャな展開となり、充分に面白い。

 ウィリアム・デズモンド・テイラー殺害事件に巻き込まれてキャリアを断たれてしまい、現在では忘れられた存在となっているミンターの魅力を感じとることのできる貴重な作品だ。