映画評「男になったら」 エルンスト・ルビッチ監督作

 原題「I DON'T WANT TO BE A MAN」 製作国ドイツ パーグ製作
 監督・脚本エルンスト・ルビッチ 出演オッシ・オスヴァルダ

 当時、ドイツで映画監督として活躍していたエルンスト・ルビッチは、様々なタイプの映画を製作していた。後年のルビッチのイメージとは遠い、歴史劇や探偵ものといった作品も監督している。この作品は、そんな中では後のルビッチにも通じる軽い喜劇と言えるだろう。

 男っぽい生活に憧れるオッシは、男装をしてダンス・ホールへと遊びに行く。そこで、自分の保護者であるケルステンを見つけて声をかける。ケルステンはオッシを男性と思い込み、2人は意気投合する。

 女性が男装する作品は、サイレント期のコメディではたまに見られるパターンで、グロリア・スワンソンもキーストン社の映画「DANGER GIRL」(1916)で男装姿を見せている。この作品がおもしろいのは、男装しているオッシを男性だと思い込んでいるケルステンが、同性にも関わらず繰り返しキスをするところだ。明らかにゲイを思わせる描写なのだが、その後そのことに触れられることはない。最後はオッジーとケルステンは結びつくので、ケルステンはバイ・セクシャルだと捉えることもできる。

 ストーリーはありがちと言えばありがちで、それほど捻りもきいていない。だが、テンポがいいためと、上映時間が短い(約45分)ため、見ていて気持ちよく時間を過ごすことができた。