ダグラス・フェアバンクス アメリカ的な生き方の伝道者

 ユナイテッド・アーティスツを設立したダグラス・フェアバンクスは、ユナイテッド・アーティスツでの第一作として、「ダグラス大王」(1919)に出演している。「ダグラス大王」は、世界最高の客席数を持つニューヨークのキャピタル劇場のこけら落とし作品でもあった。ニューヨークのしゃれ者ウィリアムがヨーロッパの小王国の国王の座を相続し、アメリカ流のノウハウと軽い身のこなしで、政治的陰謀を乗り越え、美女と結ばれるという活劇である。また、ヨーロッパの大臣や貴族をからかい、アメリカ的な生き方を教えるという内容でもあった。フェアバンクス映画の初期においてはアメリカ国内の上流階級をからかっていたが、からかいの対象は外国へと向かっていった。一方で、フェアバンクスの作品には説教臭さも含まれていたという。

 他にもフェアバンクスは、「WHEN THE CLOUDS ROLL BY(暗雲晴れて)」(1919)といった作品に出演している。

 当時のフェアバンクスの映画についてジョルジュ・サドゥールは「世界映画全史」の中で、アレグザンダー・ウォーカーは「スターダム」の中で、次のように書いている。

 「ダグラスは、自分の力を意識し、頽廃している旧大陸を説教し始めながらハリウッド(そして帝国主義アメリカ人)を具象化していた」(世界映画全史)

 「ダグにはもともと多分に伝道師的な素質があり、彼が自分自身で全面的に監督をするようになると、彼の映画の倫理的な教訓臭はますます強まった」(スターダム)

 一方でフェアバンクスの生き方は、大衆に支持されていた。アレグザンダー・ウォーカーは、「スターダム」の中で次のように書いている。

 「彼は自分自身と若さの理想とを精力的に−これ以外に彼のやり方はないのだが−同一視するようになったのだ」

 「大衆がフェアバンクスを“善の理想(グッド・コース)”と同一化したことによって、彼のスター性はおのずから拡大した」

スターダム―ハリウッド現象の光と影

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