リチャード・バーセルメスがスターに

 「散りゆく花」(1919)の主役の中国人役を演じたリチャード・バーセルメスは、スターとなっている。D・W・グリフィスは稽古の段階では、中国人の役を決めていなかったという。稽古自体はベテラン俳優で行われ、バーセルメスは稽古の様子を見ていただけだったとう。だが、バーセルメスは役が与えられると、観察の成果を演技に活かして見事に演じきった。18日間という短期間の撮影による緊張感もいい結果を生んだと言われている。

 ちなみにリチャード・バーセルメスはこの年、D・W・グリフィス監督の「悪魔絶滅の日」(1919)という西部劇にも出演しており、この作品のテストをルドルフ・ヴァレンティノが受けていたという。グリフィスは「異国風すぎる」との理由でヴァレンティノを採用しなかったという。そしてヴァレンティノは、「EYES OF YOUTH」(1919)という作品に出演しているところを、MGMの脚本家に認められて、スターの階段を上っていく。ヴァレンティノの代わりにグリフィスは、自分好みのアメリカの好青年タイプのバーセルメスを起用したのだった。後に大スターとして活躍するヴァレンティノの魅力に気付かなかったグリフィスは、感覚が一般の映画ファンとずれてきていたとも評されている。

アメリカ映画製作者論 (1965年) (垂水叢書)

アメリカ映画製作者論 (1965年) (垂水叢書)