D・W・グリフィスの映画製作と「ギッシュ時代」の到来
「散りゆく花」(1919)の他にもグリフィスは「勇士の血」「大疑問」「スージーの真心」(1919)といった作品を製作している。
パラマウント系の製作会社アートクラフト社で製作された「スージーの真心」の撮影においてグリフィスは、福音者たちの集会のシーンで、自らが説教することでエキストラが感動するシーンを演出したと言われている。グリフィスは自分自身の太く、ゆっくりとして、おごそかな声を使って俳優の気分を乗せたと言われているが、それが端的に現れた例といえるだろう。そして、こういった演出法は、サイレント期ならではのものだった。
「スージーの真心」は、リリアン・ギッシュ主演の作品で、田舎娘のスージーが、お人好しのために好きな男となかなか結婚できない物語である。評判も上々だったという。ちなみに、この頃になるとグリフィスはギッシュにあまり演技指導しなくなっていたという。それだけ、グリフィスのギッシュの演技への信頼は高まっていたとも言えるが、意地悪な見方をするとグリフィスはギッシュに頼るようになっていったともいえる。アイリーン・バウザーは、「グリフィスの映画監督歴の中でもこのあと数年間は『ギッシュ時代』と呼んでいいかもしれない。そしてリリアン・ギッシュは主演を重ねながら女優として押しも押されぬ存在に成長してゆくことになる」と述べている。
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