ヴァンプの失墜とデミル映画の亜流たち

 セシル・B・デミル流のセックス・アピール映画が流行する一方で、セダ・バラ主演の「愚者ありき」(1915)のブームによって誕生したヴァンプは、失墜を迎えていた。理由としては、観客の目が肥え、きちんとした動機がないと納得せずに嘲笑を呼ぶようになったことや、第一次大戦以後の女性の職場進出が、生計もないヴァンプの存在を不自然に見せたといった点が指摘されている。1920年代は仕事に絡めてセックスが描かれるようになり、ヴァンプはフラッパー・ガールへと変貌していく。

 デミルの映画の成功の二番煎じともいえる、「正しい相手との結婚」を推奨する作品も作られている。

 「女の学ぶ事」(1919)は、フレッド・ニブロが監督で、ニブロの妻であるエニッド・ベネットが主演した人情劇である。ヒロインはまじめな青年弁護士の求婚を退けて、社交界の寵児と結婚するが、彼が価値なき遊蕩児だったために苦労するという内容の作品である。

 「女と虚栄」(1919)は、ジェス・D・ハンプトンが監督し、虚栄心から金持ちと結婚したヒロインが夫殺しの容疑をかけられるという内容の作品だ。

 「歓楽の女」(1919)は、ウォーレス・ウォーリーが監督し、父の命令でやむなく結婚した相手の貴族が獣のように残忍な男だったという内容の作品である。


銀幕のいけにえたち―ハリウッド・不滅のボディ&ソウル (1980年) (本の映画館/ブック・シネマテーク〈3〉)

銀幕のいけにえたち―ハリウッド・不滅のボディ&ソウル (1980年) (本の映画館/ブック・シネマテーク〈3〉)