アドルフ・ズーカーの映画館拡大路線

 映画興行会社のパラマウントのボスだったアドルフ・ズーカーは、パラマウント・グループの映画会社が製作した作品の上映を希望する映画館は、すべてのパラマウント・グループの映画の上映を引き受けなければならないという「ブロック・ブッキング方式」を採用していたが、反発も大きかった。ズーカーに反発する映画興行者たちはファースト・ナショナルという会社を組織して映画製作にも乗り出し、ズーカーに対抗した。

 そんな状況でズーカーが取った戦略は、傘下の映画館の拡大だった。映画館を買収することで反発されることなく、パラマウント・グループが製作した映画を安定的に興行することができると考えたのだ。ズーカーは、映画館を買収したり新設したりすることによって、全米の5%弱の映画館を確保し、ブロック・ブッキングを確立していくことになる。

 この動きに他社も追随していくことになり、独立系の映画会社は上映する場所を失う状態となり、徐々に巨大な映画会社の傘下に収まっていくことになる。

 ズーカーは、映画製作の分野でも手を抜くことはなく、メアリー・ピックフォードに対抗させようと17歳のメアリー・マイルズ・ミンターと契約をしている。

 そんなズーカーのパラマウントとこの後ライバルとなっていくのが、マーカス・ロウのロウズ社だ。1912年から映画館網の経営をしてきたマーカス・ロウは、1919年に2,700万ドルの資本金でロウズ社を設立している。ロウズ社は、アメリカ映画界において大きな役割を果たしていくことになる。


アメリカ映画の大教科書〈上〉 (新潮選書)

アメリカ映画の大教科書〈上〉 (新潮選書)