ノン・スター映画「ミラクルマン」の成功

 ハリウッドではスターが中心としたスター・システムがほぼ確立されていた。ユナイテッド・アーティスツを設立したメアリー・ピックフォードやダグラス・フェアバンクス、チャールズ・チャップリンといったスターたちは、すさまじい成功を収めていた。

 そんな中、「ミラクルマン」(1919)という映画がノンスターで製作されてヒットし、ハリウッドの映画会社を驚かせている。

 「ミラクルマン」は、ボストンの小売商人だったアイザック・M・ウォルパーという人物が、ジョージ・ローン・タッカー監督と契約して製作した作品である。フランク・L・パッカードの原作に基づく風刺劇で、奇跡を行って病気を治す老医師に悪漢一味が取りつき大儲けをするが、医師に感化されて善人になっていくという内容である。当時はまだスターとは言えなかったロン・チェイニーが、体が麻痺した浮浪者を好演しているという。宗教団体が賞賛したこともあり、大ヒットを記録している。

 ちなみにチェイニーは、名コンビとなるトッド・ブラウニング監督作「THE WICKED DARLING(泥中の薔薇)」(1919)にも出演している。

アメリカ映画の文化史―映画がつくったアメリカ〈上〉 (講談社学術文庫)

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